「阿弥陀堂だより」 南木佳士

南木佳士さんの「阿弥陀堂だより」。

自信を喪失した作家と、医師として活躍していたが精神的に病んでしまった妻。
故郷の長野に移り住み、村での生活や阿弥陀堂のおうめ婆さんらと交流する中で、心身ともに少しずつ変化していきます。

村の寂れた、もの悲しい雰囲気や、四季がうまく描かれていて、読んでいると村の様子が目に浮かぶようです。

また、作者の南木佳士さん自身が医師であり、また、パニック障害や鬱を経験されているということもあり、主人公の妻の心境の描写にリアリティがあります。阿弥陀堂のおうめ婆さんのことばが纏められた、作中の「阿弥陀堂だより」にも、そういった経験から生まれた作者の死生観が反映されているようで、素朴で何気ないような言葉でも心に響きます。

「良い本を読んだな~」と思える作品で(もしかしたら、少し大人向けかも)、また数年後、或いは、日常生活で疲れてしまった時に、静かな環境で再読したいです。