「影法師」百田尚樹

百田尚樹さんの「影法師」 

学問も、剣も、誰よりも達者で、人格者だった幼馴染の彦四郎。
そんな完璧だったはずの彼が、なぜ、白昼堂々、女性に狼藉を働き、行方をくらまし、不遇の死を遂げたのか。

下級武士から筆頭家老にまで上り詰めた勘一は、20年ぶりに江戸から国元に帰り、ことの真相を知る・・・

 

二人が少年時代だった頃まで遡り、彼らが様々なことを経験し、成長していく姿が描かれていきます。
学があっても、剣の腕があっても、身分や長男か否かによって様々なところで制約があったり、理不尽なことでも受容しなければならないという武士の世界の不条理も描かれており、その時代に武士として生きることの大変さ、苦しみ、悲しみが伝わってきます。

そんな世界においては、まっすぐな勘一も、彦四郎も、大切な人を守るためには清廉潔白でばかりもいられず、「生きる」ということはこんなにも大変なことだったのかと思い知らされました。

大義や友との約束の為に自らの人生を投げうってまで献身的に生きた彼らの姿に心を打たれます。