2020-01-01から1年間の記事一覧

「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん

三浦しをんさんの「まほろ駅前多田便利軒」 第135回直木賞受賞作。 駅前で便利屋を営む多田と、高校時代の同級生である行天が依頼者からの仕事をこなしていく中で、様々な人生の機微が描かれます。大きな事件もなく、個々の依頼が実は繋がっていて最後に意外…

「すべてがFになる」森 博嗣

森 博嗣さんの「すべてがFになる」 孤島の研究所で、少女時代から隔離された生活を送っていた天才・真賀田博士。ある日、密室である彼女の部屋から両手両足が切断された死体が発見される。一体、誰が、どうやって・・・ 前代未聞の死体の登場の仕方に度肝を…

「彼らは世界にはなればなれに立っている」太田愛

太田愛さんの「 彼らは世界にはなればなれに立っている (角川書店単行本) 」 架空の町<塔の地>を舞台にした物語。 中央府による文化や情報の制限に抗うことなく、保身のために中央府への忠誠を近い、受容し、周囲に合わせながら暮らす人達を待つ結末とは・…

「バイバイ、ブラックバード」伊坂幸太郎

伊坂幸太郎さんの「 バイバイ、ブラックバード 」 「あのバス」に乗せられるまでの2週間、見張り役の怪人:繭美と共に交際相手(5人)に別れを告げに行くお話。 破天荒な繭美と鈍感な星野のユーモアあふれるやり取りや随所に描かれる繭美の怪人っぷり、個性的…

「ラットマン」道尾秀介

道尾秀介さんの「 ラットマン (光文社文庫) 」 家族内の複雑な感情や、勘違いから生まれた思考や苦悩がうまく描かれ、終盤に次々と伏線が回収されていくのは流石。 前半は大きな盛り上がりは無いものの、登場人物達の人間関係や心情がきちんと描かれ、密かに…

「占星術殺人事件」島田荘司

島田荘司さんの「 占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫) 」 密室で殺された画家と、体の一部を切り取られて惨殺された6人の娘たち。一体誰が?どうやって?? 事件から40年以上経過して明らかになった新事実から、真相が明らかに・・・ 同じ御手洗さんシ…

「異邦の騎士」島田荘司

島田荘司さんの「 改訂完全版 異邦の騎士 (講談社文庫) 」 主人公が公園のベンチで目覚めると記憶を失っていた・・・という設定で始まり、そこからラストまで、まさに山あり谷ありの展開 突っ込みどころは多々ありますが、それを差し引いてもすごい作品でし…

「幸福な生活」百田尚樹

百田尚樹さんの「 幸福な生活 (祥伝社文庫) 」 一話あたり平均17ページで完結する、全19話のショートショート。 すべてのお話で、ページをめくった最後の一行にかなりブラックだったり、ぞっとするような結末が待っています(何気なくパラパラめくるとオチが…

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」東野圭吾

東野圭吾さんの「 ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫) 」 かつて悩み相談を請け負っていた雑貨店と、悩みを抱える人々を連作短編形式で描いた、時空を超えたファンタジー。 悪事を働いた3人が逃げ込んだ廃業していると思しき雑貨店。そこに真夜中にも関わらず、…

「データ分析のための数理モデル入門」

今回は小説ではなく、技術解説書の「 データ分析のための数理モデル入門 本質をとらえた分析のために 」 データ分析やモデルについて俯瞰して書かれており、概要を広く理解できます(個々のお話はそんなに深くはないです)。 また、モデル作成時の注意点やノ…

「カエルの小指」道尾秀介

道尾秀介さんの「 カエルの小指 」。 前作「 カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) 」から10年以上経った世界。詐欺師から完全に足を洗った武沢は実演販売士として真っ当に生きていた。 そんなある日、謎の女子中学生が現れ…

「風が強く吹いている」三浦しをん

三浦しをんさんの「 風が強く吹いている 」 箱根駅伝には全く興味がなかったのですが、三浦しをんさん原作の映画を観たことをきっかけに読みました。読んで良かった! 陸上への興味も、経験も無い素人同然の大学生達が、ある一人の情熱によって箱根駅伝を目…

「透明人間の納屋」島田荘司

島田荘司さんの「 透明人間の納屋 (講談社文庫) 」 。 孤独な少年ヨウイチが唯一心を許し、尊敬する人物である、隣人の真鍋さん。彼は、透明人間が存在すること、そして、納屋で透明人間になる薬を作っていることをヨウイチに告白する。 そんなある日、密室…

「異人たちの館」折原一

折原一さんの「 異人たちの館 (文春文庫) 」 2018年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」 樹海で見つかった白骨死体。近くに落ちていた免許証から、失踪した小松原淳と推定された。それでも、淳の母は息子の帰還を信じて、売れない作家志望の島崎に息子の伝記の執…

「龍神の雨」道尾秀介

道尾秀介さんの「 龍神の雨 」。大藪春彦賞受賞作。 実の親を事故や病気で両親を失った、継父と暮らす兄妹と、継母と暮らす兄弟の2組の兄弟を描くサスペンス。 不遇な境遇の中で、ちょっとした勘違いや思い込みで、人を傷つけてしまったり、罪をおかしてしま…

「月と蟹」道尾秀介

道尾秀介さんの「 月と蟹 」。第144回直木賞受賞。 鎌倉を舞台にした、小学生が主人公の物語。 転校してきたクラスに馴染めない、2人の小学生。二人は次第に、秘密の隠れ家で一緒に過ごすように。 隠れ家でヤドカリを神様に見立てたお祈りの儀式を行ううちに…

「アイネクライネナハトムジーク」伊坂幸太郎

伊坂幸太郎さんの「 アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫) 」 恋愛や友達を描いた連作短編集。 殺し屋も、泥棒も出てくることなく、大きな事件もなく、とても穏やかに進んでいきますが、それでも楽しく読め進められるのは伊坂幸太郎さんのすごいところ…

「カラフル」森絵都

森絵都 カラフル (文春文庫)?。 生前の罪により輪廻のサイクルからはずされた主人公。天使業界の抽選に当たり、 輪廻のサイクルに戻るチャンスを得たが、その条件は、自殺を図った中学三年生の少年、小林真の体にホームステイし、 自分の罪を思い出すこと。…

「手紙屋」喜多川泰

喜多川泰さんの 手紙屋〜僕の就職活動を変えた十通の手紙〜 。 就職活動で悩む主人公と、手紙を通じて人の人生に役立つ情報を提供する「手紙屋」の間で交わされる手紙のやり取りで進行する物語。 自分が就職活動をしていた時、或いは、今も持っているであろ…

「風神の手」道尾秀介

道尾秀介さんの「風神の手」。 遺影専門の写真館がある街を舞台にした、時代/世代の異なる4つのお話で構成された作品。 個々のお話で起こるたくさんの出来事や "嘘" が互いに影響し合っていて、今の自分たちの存在もまた、過去の出来事の結果であるというの…

「ジェリーフィッシュは凍らない」市川 憂人

市川 憂人さんの? ジェリーフィッシュは凍らない (創元推理文庫) 第26回鮎川哲也賞受賞作。 80年代を舞台にした、少しSF的な要素があるクローズド・サークルものです。 新しい技術を搭載した小型飛行船"ジェリーフィッシュ"。技術の開発者6名を乗せた試験飛…

「シャドウ」道尾秀介

道尾秀介さんの シャドウ (創元推理文庫) 本格ミステリ受賞作。 学生時代から付き合いのある両親と、子供が小学校の同級生でもある二組の家族。そこで起きる自殺や、父親たちの異変の真相とは・・・ 小手先のトリックの技巧ではなく、人間の精神の複雑さや壊…

「十角館の殺人」綾辻行人

綾辻行人さんの 十角館の殺人〈新装改訂版〉 「館」シリーズ (講談社文庫) ツイッターでものすごく評判が良かったので、ずっと気になっていた作品。 孤島の大邸宅を舞台にした連続殺人・・・という、昔ながらの推理小説という感じでしたが(建物の見取り図や孤…

「輝く夜」百田尚樹

百田尚樹さんの 輝く夜 (講談社文庫) クリスマスを舞台にした、幸の薄い女性が主人公の短編集。 主人公に素敵な奇跡(ファンタジー要素強め)が起きる、心温まるお話の数々。文体も、ボリューム的にも読みやすく、ハッピーエンドのお話で読後感はとても良い…

「光媒の花」道尾秀介

道尾秀介さんの 光媒の花 (集英社文庫)。 山本周五郎賞 受賞作品。 部分的にリンクする6つの章で構成された短編集。"カラスの親指"で見せたエンタメ的要素は一切無く、最初から暗さや悲しさが重くのしかかります。 すべての章を読むことで、登場人物の別の一…

「カラスの親指」道尾秀介

道尾秀介さんの カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) 借金を肩代わりしたことをきっかけに人生が狂ってしまい、もう、損な生き方はしないと、詐欺師として生きる道を選んだ武沢。同じように、借金取りに追われ、家族を失っ…

「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎

伊坂幸太郎さんの アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)。 大学の新入生 椎名は、引っ越してきたアパートの隣に住む "河崎" と出会い、本屋から広辞苑を強奪する手伝いをすることに・・・ 語り手の異なる、現在と2年前の2つの話が同時進行し、意外な…

「月の砂漠をさばさばと」北村薫

北村薫さんの 月の砂漠をさばさばと (新潮文庫) 母親と娘の日常のほのぼのとしたユーモアあふれるやり取りと、おーなり由子さんおやさしい挿し絵が相まって、温かい気持ちになります。 子ども向けかもしれませんが、林家たい平さんや又吉さんもお気に入りら…

「ロジカルライティング」照屋華子

照屋華子さんの ロジカル・ライティング (BEST SOLUTION―LOGICAL COMMUNICATION SKILL TRAINING) プレゼンなどの提案資料や報告書に限らず、日常のメールなど、日本語できちんと書くシーンは山ほどあります。 しかし、ライティング技術を学ぶ機会は無かった…

「深紅」野沢尚

野沢尚さんの 深紅 (講談社文庫) 修学旅行中に家族を惨殺され、一人残された少女の心情の描写や、犯人が犯行に至る動機を述懐する描写が巧みで、双方の気持ちがわかる分、序盤から胸が苦しくなります。 12年後、少女は犯人に自分と同い年の娘がいることを知…